本学会は、アジア諸国・地域における教育の歴史・現状および展望に関する学術的研究を行うことを目的とする。
周知のとおり、近年アジア諸国・地域の社会変動には目を見張らせるものがある。教育文化面におけるイノベーションとグローバリゼーションの進展も顕著であり、今日ではいずれも複雑且つ加速的である。これらアジア諸国・地域における教育文化変動は、日本の学界・教育界に少なからざるインパクトを及ぼしている。
こうした状況のなか、アジア諸国・地域の教育研究を更に大きく前進させるためには、アジア教育の歴史的研究に従事するものと、フィールドワークや現状分析を行う専門家との間の相補的協力関係が不可欠となっている。アジア教育の研究者と日本教育や欧米教育の専門家との連携の一層の強化もまた、その必要性が認識されている。
確かに、今日アジア諸国・地域における教育変動の現状やその歴史的背景に関心をもち、それらの研究に真摯に取り組もうとする若手・中堅研究者は、従来に比べその数を大幅に増している。そこでは資料・文献にもとづく実証研究だけでなく、各種の斬新な手法を取り入れて研究の深化を図ろうとする努力も見られる。しかしながらその研究は、ともすれば研究者個々の興味・関心に即して展開され、研究対象や方法が多様化する一方、過度の細分化が進み、些末実証主義的傾向さえ見られる。研究対象地域が特定のそれに集中する傾向もある。また、研究者が各地に散在するため、研究上の協力体制も十分整備されるには至っていない。
本学会は、こうしたアジア教育研究の現況を克服するとともに、専門領域や研究方法を異にする研究者や専門家の協力関係のもと、アジア諸国・地域の教育に関する国際的、かつ学際的研究の場となることを願っている。歴史意識をもって現代教育の課題解明に取り組む機会、および現代的課題意識をもって歴史的アプローチを行う機会を提供することをとおして、上記目的を達成しようとするものである。
2006年7月14日
アジア教育学会設立発起人一同